飲食店開業に必要な資格とは?基本知識
飲食店の開業を考えている方にとって、まず知っておくべきなのが必要な資格や許可についてです。夢のお店を持つためには、情熱だけでなく、法律で定められた様々な資格取得や手続きが必要になります。
飲食店を開業するには、「食品衛生法」に基づく営業の許可の取得が必要です。許可取得のためには、各自治体が定めた施設基準に合致した施設をつくる必要があります。そのため、まずは営業を行う施設の所在地を管轄する保健所に事前相談することが重要です。
飲食店開業において、必要な資格や手続きを事前に把握しておくことで、開業準備をスムーズに進めることができます。本記事では、飲食店開業に必須の資格と取得方法、そして開業資金の考え方について詳しく解説します。
飲食店開業に必須の資格一覧
飲食店を開業する際に必要となる主な資格は以下の通りです:
- 食品衛生責任者:飲食店営業には必須の資格
- 防火管理者:一定規模以上の店舗で必要
- 酒類販売免許:アルコール類を提供する場合に必要
これらの資格は、開業するお店の種類や規模によって必要性が変わってきますが、ほとんどの飲食店で「食品衛生責任者」は必須となります。
資格取得のタイミングと優先順位
飲食店開業の準備を進める中で、資格取得のタイミングも重要なポイントです。特に食品衛生責任者の資格は、営業許可申請の際に必要となりますので、開業準備の早い段階で取得しておくことをおすすめします。
資格取得の優先順位としては、以下の順序が効率的です:
- 食品衛生責任者(営業許可申請に必須)
- 防火管理者(店舗の規模によって必要)
- 酒類販売免許(酒類を提供する場合)
飲食店経営に必要な法的資格と許可
飲食店経営において、法的に必要な資格と許可について詳しく見ていきましょう。これらは開業前に必ず取得しておくべきものです。
食品衛生責任者の資格取得方法
食品衛生責任者とは、営業者の指示に従い、HACCPに沿った衛生管理など施設における衛生管理にあたる人のことです。また、営業者に対し必要な意見を述べるよう努めることも役割の一つです。
食品衛生責任者になるには、主に以下の方法があります:
- 食品衛生責任者養成講習会を受講する(最も一般的な方法)
- 既に「医師、歯科医師、薬剤師、獣医師あるいは医学、歯学、薬学、獣医学、畜産学、水産学または農芸化学の課程を修めて卒業した者」は資格要件を満たしています
- 栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を持っている方も食品衛生責任者になることができます
養成講習会は各地域で定期的に開催されており、講習会は通常1日で終了し、受講料は数千円程度です。
防火管理者の役割と取得プロセス
防火管理者は、学校・病院・工場・オフィス・商業施設・飲食店・共同住宅など多数の人が利用する建物・施設において、火災による被害を防止するため、消防計画の作成、消防用設備等の維持管理、消火・避難訓練の実施など、防火管理上必要な業務を行う責任者です。
防火管理者の選任が必要な建物は、その建物に出入りし、勤務し、または居住する者の数(収容人員)によって決まります。特に「映画館、遊技場、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院、地下街など、不特定多数の人が出入りする建物で、建物全体の収容人員が30人以上のもの」は防火管理者の選任が必要です。
防火管理者になるためには:
- 防火管理講習(甲種または乙種)を受講し修了する
- 甲種防火管理者の資格は2日間、乙種防火管理者の資格は1日の講習を修了することで取得できます
甲種防火管理新規講習の修了者は、建物の用途・規模・収容人員に関係なく、すべての建物で防火管理者になることができます。一方、乙種防火管理講習の修了者は、小規模な建物の防火管理者や、大規模な建物の中の小規模テナント部分などの防火管理者にしかなれないという制限があります。
酒類販売免許の申請手順と注意点
飲食店で酒類を提供する場合、酒類販売免許の取得が必要かどうかは提供方法によって異なります。
酒場、料理店その他酒類を専ら自己の営業場で飲用に供する業を行う場合には、販売業免許は必要ありません。しかし、テイクアウト用など、その営業場以外の場所で飲用に供されるための酒類を販売する場合には、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります。
つまり、店内での飲食のみを提供する通常の飲食店であれば、特別な酒類販売免許は必要ありません。しかし、コロナ禍で増えたテイクアウト用のお酒を販売する場合は、別途酒類小売業免許が必要となります。
申請には手数料は不要ですが、酒類の販売業免許1件につき登録免許税が課税されます。また、販売場ごとに酒類の販売業務に従事する者であって、酒類販売管理研修を受講した者の中から酒類販売管理者を選任する必要があります。
飲食店の業態別に必要な資格の違い
飲食店といっても様々な業態があり、それぞれに必要な資格や許可は異なります。ここでは主な業態別に必要な資格の違いを解説します。
レストラン・定食屋の場合
一般的なレストランや定食屋の場合、以下の資格・許可が必要です:
- 食品衛生責任者(必須)
- 飲食店営業許可(必須)
- 防火管理者(収容人員30人以上の場合)
カフェ・喫茶店の場合
カフェや喫茶店の場合は:
- 食品衛生責任者(必須)
- 飲食店営業許可(必須)
- 防火管理者(収容人員30人以上の場合)
居酒屋・バーの場合
居酒屋やバーなどアルコール提供を主とする店舗では:
- 食品衛生責任者(必須)
- 飲食店営業許可(必須)
- 防火管理者(収容人員30人以上の場合)
- テイクアウト用のお酒を販売する場合は酒類販売免許も必要
テイクアウト専門店・キッチンカーの場合
テイクアウト専門店やキッチンカーは、店内飲食がない分特殊な面があります:
- 食品衛生責任者(必須)
- 飲食店営業許可または菓子製造業等の許可(取扱い食品による)
- 酒類を販売する場合は酒類販売免許が必要
飲食店開業の準備フェーズと資格取得のタイムライン
飲食店開業までの一般的なタイムラインと、その中での資格取得のタイミングを押さえておきましょう。
開業6ヶ月前までに取得すべき資格
開業の6ヶ月前には、以下の準備を始めることが理想的です:
- 事業計画の作成
- 市場調査・競合分析
- 立地選定の開始
- 食品衛生責任者資格取得の準備(講習会のスケジュール確認)
- 防火管理者講習の情報収集
開業3ヶ月前までの準備と申請
開業3ヶ月前までには:
- 店舗物件の契約
- 食品衛生責任者資格の取得
- 防火管理者資格の取得(必要な場合)
- 保健所への事前相談
- 設備・内装工事の開始
開業直前の最終確認事項
開業直前(1ヶ月前~開業日)には:
- 飲食店営業許可の申請と取得
- 防火管理者選任届の提出(必要な場合)
- スタッフの採用と教育
- 仕入れルートの確保
- オープン告知の準備
特に飲食店営業許可は、保健所の立入検査が伴うため、内装工事完了後に申請することになります。検査から許可取得までに通常1週間~2週間程度かかることも考慮してスケジュールを組みましょう。
資格取得にかかる費用と時間
飲食店開業に必要な資格取得にはいくつかのコストがかかります。その概要を把握しておきましょう。
資格別の取得費用一覧
各資格にかかる一般的な費用は以下の通りです:
-
食品衛生責任者
- 講習会受講料:約7,000~10,000円
- 所要時間:1日(約6時間)
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防火管理者
- 甲種講習受講料:約8,000~10,000円
- 乙種講習受講料:約6,000~8,000円
- 所要時間:甲種2日間、乙種1日
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飲食店営業許可
- 申請手数料:約20,000円弱
- 所要時間:申請から取得まで約1~2週間
隠れたコストに注意!予想外の出費
資格取得以外にも、開業準備では以下のような「隠れたコスト」に注意が必要です:
- 保健所の事前相談のための図面作成費用
- 施設基準を満たすための設備投資
- 有資格者を雇用する場合の人件費
- 食品衛生責任者には定期的な実務講習会の受講が義務付けられており、その費用と時間
時間効率の良い資格取得方法
限られた時間の中で効率よく資格を取得するためのポイントは:
- 早期からの情報収集と計画立案
- eラーニングなど、オンラインで受講できる講習会の活用
- 複数の資格講習を集中して受講する期間を設ける
- 地域の食品衛生協会や消防署のホームページで講習会日程を定期的に確認する
まとめ:飲食店開業の資格取得ロードマップ
飲食店開業に必要な資格の取得は、計画的に進めることが重要です。以下の手順で進めていくとスムーズです:
- 開業計画の立案(業態・規模・立地の決定)
- 管轄の保健所・消防署への事前相談
- 食品衛生責任者資格の取得
- 防火管理者資格の取得(必要な場合)
- 店舗物件の確保と内装工事
- 飲食店営業許可の申請と取得
- 酒類提供や各種サービスに必要な追加の許可・届出
飲食店開業の道のりは決して簡単ではありませんが、必要な資格と許可を適切に取得し、しっかりとした準備を行うことで、夢のお店を実現する第一歩を踏み出すことができます。
この記事が、あなたの飲食店開業の一助となれば幸いです。地域によって細かい規定が異なる場合もありますので、最終的には開業予定地の管轄機関に直接相談することをお忘れなく。
成功する飲食店開業へ向けて、一歩ずつ着実に準備を進めていきましょう。
全体像はこちら:飲食店開業の流れ|失敗しない12のステップ